突然脳梗塞で亡くなった母。
着物が好きだった母で、一度も袖を通すことができなかった着物と…。
母に伝えたかった想いをつづった感謝の手紙を棺の中に入れました。
―故人様のお好きだった品は燃えるものであれば棺に入れることができます。
エントランスには父の大好きだったゴルフや写真であふれていた。
気が付けばたくさんの人がその場所を囲み、涙ぐむ人、微笑む人、立ち尽くす人、のさまざまな思いでいっぱいだった。
まるで父も一緒にそばで見ていてくれているような気もした。
「思いを形にして届ける」
人一人がこの世からいなくなるということは、とてつもなく悲しい事です。
この人は人生をどのように生きてこられたのか…
それを後に残された人が改めて気づくことがあります。
はじまりはスクリーンいっぱいに母の優しい笑顔が映し出された。
それから大好きな愛犬との写真、私と妹がまだ幼かった頃の家族旅行、父との結婚式での写真…刻々と母の物語が動き出した。
ついさっきまでここにいたような、泣ける程の思い出とメロディーが重なり…わたしは泣きながら笑っていた。
決して消えることのない、母だけのストーリーが未来へ受け継がれていく。
~人気楽曲 ♪ALWAYS三丁目の夕日 ♪糸 ♪川のながれのように ♪わが人生に悔いなし ♪道標 ~
父の車に乗ると、いつもこの曲が流れていた。
よく父が隣で口ずさんでいたことを思い出した。あの時の光景が鮮明に脳裏に映る。
明るくてテンポの良い曲だったが、今日はピアノの優しい音色となり僕の心奥底まで響いた。
感情は瞳に溢れ、父をそばに感じながら僕はその曲を口ずさんだ。
父も一緒に口ずさんでくれていると感じながら…。
―プロの生演奏を葬儀に取り入れ、思い出の曲を選抜されました。
若い頃から木材の仕事一筋だった主人。
あの人らしく送ってあげたいと強く思っていた私にスタッフの方が言ってくれました。
「お棺はお見送りの際、ご主人様をお納めする”最後の宿”となります」
…その一言に棺の想みを感じました。家族のために朝から晩まで仕事を頑張ってくれていた主人。それでも木材の仕事が大好きだったことを思い出しました。
そして主人のために精一杯の気持ちを込めて家族と選んだ”最期の宿”がとても似合っていて、「ありがとな」と主人の声が聞こえた気がして、後悔のない最期となりました。
―その方らしいお棺をさまざまなプランからお選びいただきました。
お風呂が大好きだった母。昔から近場の温泉に行くのが私と母のいつもの楽しみで。
「いつか温泉旅行に行こうね」と約束したまま病気になり、長い間闘病生活を送っていたが別れの日は突然に。
大好きな温泉も一緒に行けないまま旅立ってしまった母に湯灌をしてもらった。
母とたくさんお話をしながら、洗髪をさせてもらえた時間はまるで一緒に温泉へ行ったときのように穏やかな時間で、
―あぁ、これで母を悔いなく送ってあげられる―と頬が涙で熱くなった。
―湯灌の儀を行いました。
祭壇は、亡き人がこの世に生を受け、人生を全うとしたことへの「最後のはなむけ」。―――
最後の贈り物として何ができるだろうか。どうしたら喜んでくれるだろうか。
そう考えている時は悲しいはずなのに、大切な記憶の引出がいっぱいあることに
嬉しくなったり、幸せだったり…いろいろな気持ちになる。
好きな色や花で、そしてカタチで、「最後のはなむけ」を最大限に。
―オーダーメイドで祭壇を飾りました。
家族でよく行った場所、通った道、初デートした場所、
友人たちと出かけていたゴルフ場や釣り場など・・・
ゆかりの地をご縁のあった方々と一緒に巡りましょう。
―想い出の場所を巡りました。